こんにちは。
突然ですが、皆さんは外の景色をぼーっと眺めるのは好きですか。
私の場合、部屋の窓からお隣りの家の木々を愛でるのが朝のちょっとした幸せで。
窓の外に広がるきらきらっとした木の葉を見ては癒されております。
SNSでも、窓から広がる美しい景色をひたすら配信しているアカウントがお気に入りです。笑
今日ご紹介するのは、ある窓辺に飾られたおもちゃたちの物語。
実はこのお話、何年か前に英語版の原書に出会って「素敵〜!」とすぐにお迎えしたのですが、訳書でも刊行されていたことをつい最近知り驚いた作品です。
日本語版もとっても素敵で、嬉しくなりました♪
・・・おはなし・・・
”おもちゃたちは まどのそとを ながめて まっています。いったい なにを まっているのかな”
夜の好きなふくろうは、月が出るのを。
傘をさしたぶたのお嬢さんは、雨がふるのを。
凧を持ったくまのぼうやは、風が吹くのを。
ソリに乗った子犬は、雪がふるのを。
ゆらゆらうさぎは、なにか楽しいものが見えないかと、待っています。
時々だれかが出かけましたが、ちゃんと帰ってきました。たまにはみんな揃ってお昼寝したり、贈りものが届いたり、遠い国からお客さんがやってきたことも。
そんなある日のこと、新しい仲間が加わりました。まぁるい猫です。この猫は、窓の外に何かを待っているようには見えませんでしたが、実はこの日を待っていたのです!
今ではみんなで十のおもちゃに。今日も窓辺で、なにが起きるか待っています。
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原書では”Waiting”と題名のついたこの作品。
”待っている”というと、何か特別なものを待っているのかな、とドラマティックな出来事を連想しがちですが、このおもちゃたちが待っているのは雨が降ったり、月が出たり、風がふくこと。
窓の外で移り変わる景色を楽しみ、日々存在しているおもちゃたち。
その姿に何だかほっとした気持ちになります。そして、たとえば月が輝いていたり花が咲いているのを見て、それを思いきり堪能したのはいつだろう・・・と、立ち止まってみたくなります。
ちょっとした事件はありながらも穏やかな時を過ごすこのおもちゃたちにとって、新たな仲間が加わるというのはどれほどの大事件でしょう。しかも、え?え?その中にもまだいたの!?という展開は、ビックリ仰天だったに違いない。
そして。仲間が増え、穏やかに日常に戻っていく様子にまたも安心するのです。
一箇所でお話が展開する「定点観測」の絵本はいろいろありますが、これもまさにその一つ。窓辺一箇所にフォーカスされているからこそ、天気や季節の移り変わるさまが鮮やかに浮かび上がってきます。
このおもちゃたちは時々子どもに遊ばれているおもちゃと思うのですが、子どもの存在も一切登場しません。だからか、さらに想像がふくらみます。
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忙しくなるとそれどころじゃなくなってしまうけれど、日々の何気ない出来事を味わって生きるって素敵だな、それが一番の幸せだなぁと、最近しみじみ感じる私。
庭の花が咲いたこと、作ったお昼ご飯でお腹が満たされること、暑い日に飲んだお水が最高に美味しかったこと、見上げた空がきれいだったこと…
探しに行かなくても、ささやかな日常に実はドラマはたくさん潜んでいて、きっと見逃していることだらけだからたくさん発見して感じたいなと、読んで思うのでした。そのためには、耳を澄まして、心を澄ましておかなきゃなぁ。
ここに集まる仲間は、一緒に景色を眺めているけれど好きなものはみんなそれぞれ違う。その自然なままで調和して共にいる姿も平和です。
小さな置き物やおもちゃに目がない私には、この絵本は心を貫く大ヒット。
こんな大きな空が広がる窓があったら・・・と、妄想が止まらない。笑
淡くやさしい色彩にも惹き込まれます。読み手に感じ方が委ねられている余白も素敵。
どう感じるのか、皆さんにもぜひ読んでみてもらいたいなぁ。
子ども向けにもちろんお薦めですが、実は大人の方が刺さるかも、と感じました。
ぜひ、お気に入りの飲みものと一緒に読んで一息ついてみてくださいね。
静かなしあわせがつまった一冊です。
作者ケビン・へンクス(Kevin Henkes)さんのHPはこちら→https://kevinhenkes.com/
日本でも訳書が多数。この作品で2016年コールデコット賞オナーブックとドクタースース賞オナーブックを受賞しています。
『まどべに ならんだ 五つの おもちゃ』
ケビン・ヘンクス 作・絵
松井るり子 訳
徳間書店 2015年
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