【絵本13】『よあけ』光の魔法

音もなく、静まりかえって、寒くしめった夜。

おじいさんと孫が木の下で眠っています。

月が照らす湖。その湖面にさざなみを立たせるそよ風。

鳥がなき、空は次第に明るくなって・・・

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唐の文学者柳宗元(りゅうそうげん)の詩「漁翁」がモチーフになったといわれる、ユリ・シュルヴィッツさんの作品です。

ユリ・シュルヴィッツさんは東洋美術に通じたアーティストで、絵本もどこか独特な雰囲気が漂います。柳宗元は8世紀唐の時代に活躍した文学者だそうです。

”漁翁 夜 西巖に傍いて宿し
暁に淸湘に汲みて 楚竹を然く
煙銷え日出でて 人を見ず
欸乃一聲 山水綠なり
天際を迴看して 中流を下れば
巖上無心に 雲相逐う”

”年老いた漁師が、夜になると、西岸の大きな岩に舟を寄せて停泊した。
明け方に彼は清らかな湘江に水をくみ、楚の竹を燃やして朝食を作る。
やがてもやが晴れ太陽が昇ると、もはや漁翁の姿は見あたらない。
舟をこぐかけ声がひと声高くひびいて、山も水もあたりはすべて緑一色に染まっている。
空の果てを遠くふり返りつつ、川の中ほどを下って行くと、雲が大岩の上空に、無心に追いかけあっているように流れていた。” 
ー関西吟詩文化協会より

「漁翁」の詩です。

山水すべてが緑一色に染まる景色は、それはそれは美しいです。

月の光から、太陽の光へ。変化する繊細な光の描写が本当に見事で、それをみるだけでもぜひ手に取っていただきたい。

新しく始まる朝に今日の希望を感じる私。

ページをめくるだけでどんな場所にいても深い自然の中にトリップできる感覚が、絵本の素敵なところだなと。動画とは違って、自分の内側から能動的に湧いてくる感じがあって。(動画もいいんですけどね♪)

私はシュルヴィッツさんの描く淡い青が大好きです。

また、こちらでご紹介しますね。

今日もいい1日を。

『よあけ』
”Dawn”
ユリー・シュルヴィッツ 作・画
瀬田貞二 訳
福音館書店 1977年

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