図書館に行ったとき、偶然見つけて借りた一冊。
『秘密の花園』のフランシス・ホジソン・バーネットが子ども向けに書いたおとぎ話です。
大人になって人に勧められてはじめて『秘密の花園』を読んだのですが、もう時代を感じさせないくらい、というか今の時代に実はピッタリじゃないかと思うくらい、明るさや希望が響いてくるお話で衝撃を受けました。
この一冊もわくわく読んでみたのですが、やっぱりすごく明るくて元気をもらいました!
・・・おはなし・・・
シンシアという女の子の部屋に、「オンボロやしき」と呼ばれる古い人形の家がありました。
その人形の家は、シンシアのおばあさんが子どもの頃に遊んでいたものです。
今では、家も、中に住む6人の人形たちも、みんなボロボロでしたが、人形たちはいつも陽気に楽しく暮らしていました。
ある日、ピカピカの新しい人形の家と、華やかな貴族の人形たちが子ども部屋にやってきて、オンボロやしきは部屋のすみっこに運ばれてしまいます。
ですが、気だてのいいオンボロやしきの人形たちはちっとも気にしません。笑って踊って、新しい人形たちの暮らしに感心しながら過ごしていました。
そんな時、女の子の乳母が、オンボロやしきを燃やしてしまおうと思いつき・・・。
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オンボロやしき、ピカピカ城、ヘンテコちゃん、ハチャメチャ・ピーター、キマグレ女王・・・
まずはネーミングが面白い。
このお話の芯は、人形たちの底抜けの明るさと屈託のなさです。
まずしい暮らしをしようが、部屋のすみっこに追いやられようが、自分たちを憐れむこともなく、楽しくにぎやかに、笑い転げながら日々過ごしているさまに、こちらもくすくす笑えてきます。
わたしが特に好きなのは、どんなことも思いっきり前向きに捉えるハチャメチャ・ピーター。
みんなが悲しみに飲まれそうなときも、はげます勇気のあるナイスガイです。
お世辞にもすてきと言えないボロボロさでも、ピカピカ城の美女にアタックできるくらいポジティブなんです〜。すごい。これは、実際にまわりにいたらイラッとさせられてしまう位のレベルかも。笑
そういう彼らですから、燃やされてしまうという一大事を迎えるたびに、妖精の女王さまに助け出されるんです。
これを読んでると、人の幸せは、なにかを持っているとか、どういう暮らしをしているかは実はあまり関係なくて、いつだって心の持ちよう一つじゃないかなって思えます。
実際、ピカピカ城に住む人形たちはあんまり楽しくなさそうなのです。
この貴族の人形たちは、ある事件でオンボロやしきの人形たちに助けられることになります。
そして、持ち主のシンシアはオンボロやしきに見向きもしませんが、この家の良さをわかってくれる人が、ちゃんと現れるのです。
この辺はちょっとシンデレラの展開みたいだなって思ったわたし。
価値がわかる人にはわかるし、大切に扱う人は扱うのね。
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このお話の訳を担当された尾崎愛子さんの後書きに、こんな文章があります。
”『オンボロやしきの人形たち』の根底に流れているのは、「どん底の状況だって、心さえ明るく保っていれば、きっといいことが起こる」という信念です。”
”「心」の持つ力は、フランシスの生涯にわたる大きな関心事でした。たぐいまれな想像力と創作力にめぐまれたフランシスにとって、創造を可能にする、人間の「精神」や「心」の働きはとても興味深いものだったのです。”
フランシス・バーネットは素晴らしい才能を発揮しながらも、人生で数々の苦難を経験した人でもありました。「心の力」を自身で鍛え「心の力」を信じた女性だったのでしょう。
『秘密の花園』からも、このお話からもひしひしと感じたわたしでした。
このお話が書かれたのは1906年、『秘密の花園』は1911年。
どちらも100年以上前のお話ですが、こんなふうに楽しく読めるところに、100年前の読者と交流できているような、なんとも言えない嬉しさが込み上げます。
大人も元気をもらう一冊です。
『オンボロやしきの人形たち』
”Racketty-Packetty House”
フランシス・ホジソン・バーネット 作
尾崎愛子 訳 平澤朋子 絵
徳間書店 2021年
読むなら:小学生さん〜
こんな人におすすめ:今ちょっと元気が足りない人、人形や妖精、魔法の世界がすきな人、すこし長めのお話に挑戦したい人
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