最近、泣いたできごとはありますか。
わたしは「ブラック・ジャック」のアニメを観て、何とも言えない気持ちになってぽろっと泣きました。。振り返ると、涙のでる瞬間はちょこちょこあるのかも・・・。
泣いた後は、気持ちが落ち着いてすっきりしますね。実際に泣くとオキシトシンという興奮や痛みを鎮めるホルモンが出るのだそうです。
でも、泣いてるところってプライベートだからやっぱりあんまり見られたくないなって思っちゃうわたしです。
そんなこんなで、今日は「泣く」をテーマにした絵本をご紹介したいと思います。
それでは
・・・おはなし・・・
マリオは ずっと
かんがえごとを していました
おかあさんが じっと
マリオが なにかいいだすのを まっています
そのうち
マリオは やっときこえる
ちいさなこえで いいました
「ぼくたち どうしてなくの?」
お話は、涙が水たまりをつくっている美しい表紙から始まります。
ページを開くと、親子はベンチに座っています。
マリオの質問に、お母さんは「泣く」には色んな「泣く」があるんだと答えます。
例えば、悲しいとき。怒ったとき。自分のいるところが分からなくなったとき。
ぎゅっと抱きしめて欲しいとき。大人になるために。叫んでも気がすまなくて泣くひともいる。
カギをかけた思い出から、なみだが流れ出すことも。
からだが痛いとき。心が痛いとき。壁にぶつかったとき。ぴったりの言葉が見つからなくて。
ただ泣きたくて、泣くこともある・・・。
マリオはお母さんをぎゅっと抱きしめ、そして、お母さんが泣いていることに気づきます。
「ありがとう、すっとした!お母さんはすごいね。でも・・・、お母さん、どうして泣いてるの?」
その質問に、お母さんはこう答えます。
ーしあわせだなって、泣くこともあるのよ!
・・・・・・・・・・
泣く、ということをこんなに分かりやすく、かつ詩情たっぷりに表現されている絵本に初めて出会いました。作者の紹介をみると実際にスペインの詩人の方だそうです。
登場する女の子は、おそらくお母さんのこども時代。同じ三つ編みをしています。あちらこちらに登場する不思議な生き物たちも気になります。女の子の心の住人でしょうか。見開きいっぱいに広がる挿し絵から、それぞれの心模様が響いてきます。
表紙からも伝わりますが全体的に自然に包まれているような雰囲気。
読み進めると、泣くっていうのはとても自然なことで、大事な自分の一部だな、という気持ちになってきます。
挿し絵を手がけたアナ・センデル(An Sender)さんのことばをご紹介します。
”この本には、泣いていいとき、泣いてはいけないときについて書かれているわけではありません。でも、なみだの味も感じ方も、どれ一つ同じではないことを理解する助けになるかもしれません。”
なみだを顕微鏡で見るとどれも違う模様が映るみたいに、二つとして同じなみだはないことを考えたとき、そのなみだに愛おしさすら感じます。
泣くことはその時の感情も含めなかなかポジティブには捉えづらいですが、自分の気持ちを理解するきっかけをくれたり、周りのだれかの気持ちも受け止めて寄り添ってあげたくなるような、そんな優しい気持ちにさせてくれる絵本です。
大人になったお母さんが泣いているのはどうしてだろう。そんな風に考えたくなる終わり方でもあります。「泣く」に適したことばを当てはめられない時もありますよね。このお話には登場しないご自分の「泣く」に気づくこともあるかも。
「泣く」に繋がるどんな感情もハグしたくなる、素敵な絵本です。
巻末にはなみだの科学的知識も紹介されてます。
ぜひ読んでみてくださいね。
『どうして なくの?』
フラン・ピンタデーラ 文
アナ・センデル 絵
星野由美 訳
偕成社 2000年
読んであげるなら:4歳さんくらいから
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