【ぬいぐるみ絵本特集 その2】ものが語るストーリー

茹だるような暑さのなかに、少しだけ涼しさが混ざってきたような気がするこの頃です。

今回は、前回に引き続きぬいぐるみ絵本特集その2をお届けします。

その1はこちら

今回は「ものが語るストーリー」がテーマ。2冊ご紹介しますが表紙がそっくりなんですよ!
意識したとしか思えないです・・・。

それでは

1 オットー 戦火をくぐったテディベア

ぼくはオットー。ドイツで作られた、ほんもののテディベア。なかよしの少年デビッドとオスカーと三人で、楽しい日々をすごしていた。ある日、ユダヤ人だったデビッドは、両親と強制収容所に送られてしまう。そして数十年後…。この本は、ぼくたち三人の物語を伝える、ぼくの自伝です。

戦火をかいくぐり海を越え、友人と奇跡的な再会を果たすドイツ生まれのテディベア、オットーくんの数奇的な人生。

表紙をみた瞬間ちょっとどきっとしますが、『すてきな三にんぐみ』や『月おとこ』等で知られるトミー・ウンゲラーのユーモアとクールさが効いていて、読みやすく入りやすい内容になっています。独特な画風にも引き込まれます。

ウンゲラー氏自身フランスのアルザス地方に生まれ、当時のドイツ占領下で家や仕事を取り上げられ、戦争を体験後はこのオットーのようにアメリカに渡っています。自伝的な絵本でもあるそうです。

ジャーナリストのような出立ちでタイプライターをカタカタ、オットーくんが私たちに伝える物語とは。

”でも、ぼくからすれば人はだれもが同じ「人間」なんですけどね…”
オットーくんの素朴なつぶやきが心に残ります。

真っ先に選ばれる一冊ではなくとも、本棚から良きタイミングでふっと手に取られる。そんな作品だと思います。お家のラインナップにそっと忍ばせてもらいたい絵本です。

『オットー 戦火をくぐったテディベア』
”Otto: The Autobiography of a Teddy Bear”
トミー・ウンゲラー さく
鏡哲生 やく
評論社 2004年

2 愛されすぎたぬいぐるみたち

”子どもの頃、心に深い傷を負ったときに助けてくれたり、最高の出来事があったときにそばにいてくれたりする存在が人とは限りません ー 『もの』という場合もよくあることです。”

アイルランドの写真家マーク・ニクソン(Mark Nixon) が撮影した、60体以上のぬいぐるみ。こちらは絵本ではなく写真集なのですが、一つひとつにまつわるストーリーが素敵なのでご紹介します。

パーティーの後にばらばらになってしまっていたのをレスキューされたぬいぐるみ(表紙)のほか、
愛されすぎて足がもげてしまったぬいぐるみ。迷子になったぬいぐるみを探し出して涙ぐむ両親。詰めものが取れないように、看護師をしているおばが巻いてくれた包帯。何度も手術が繰り返されたぬいぐるみ。兄弟ケンカをさけるためにテディベアクリニックに保護された104歳のぬいぐるみ。焼きもちを焼いた犬との戦いにめげなかったぬいぐるみ。お馴染み『ミスタービーン』のくまちゃんも・・・

さまざまなエピソードは、時に笑えて時にしんみり。
ぬいぐるみたちがとびきり愛され構われてきた様子が伝わるとともに、持ち主のヒストリーが浮かび上がります。

どんなときも何も言わずにずっと側にいてくれるぬいぐるみ。あなたのお家にも、そんな存在はいますか。

『愛されすぎたぬいぐるみたち』
”Much loved”
マーク・ニクソン 写真・文
金井真弓 訳

・・・・・・・・・・

いかがでしたか。どちらも、ぬいぐるみ自身だけでなくその持ち主や大切な人の歴史までしみじみと伝わってくる作品です。

では、横に並べてもう一度見てもらいましょう〜。

なんか雰囲気、似てませんか!!??

全体的なシルエットも、手の曲がり具合も、バックグラウンドも、古びた感じや縫われたような跡も・・・。そう思うのはわたしだけ?笑

『愛されすぎたぬいぐるみたち』が後に出版されているので、この写真家の方に意識したのかぜひ聞いてみたいところです。

それではまた次回、お会いしましょう。

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