
どうしても惹かれる、そばに置いておきたいという絵本があります。
『光の旅 かげの旅』は、私にとってそんな絵本の一つです。
初めて読んだ時は衝撃でした。最後のページまで行き着いたら、くるっと逆さまにして読んでみる。
すると、全く別の景色が浮かび上がるのです。
お話は、家を出発するところから。農場や山道、高速道路を通って街に出て、映画を見て、一番高いビルに登って景色を眺める。ここから景色が反転。映画館はレストランに、地下鉄は駐車場に、道路はサーチライトに早変わり!家が見えてきたところで、お話は終わります。なんと粋な仕掛けでしょう!


英題は『Round Trip』ですが、物理的に絵本をまわすところも含めてこの題名はぴったり。

今見ている景色だけが、すべてじゃない。
私たちは物事を見たいようにしか見ないけれど、いつだって違う見方が隠れている。
このお話は、そんなことを伝えてくれているような気がして、読むたびはっとさせられます。
素晴らしいアートにため息。インテリアにもおしゃれな一冊です。
作者はアメリカのグラフィックデザイナー、絵本作家のアン・ジョナス(Ann Jonas)さん。
日本では他にも『いろのダンス』(福武書店)『あたらしいおふとん』(あかね書房)が出版されています。『いろのダンス』は、色の三原色(あか、あお、きいろ)がとても分かりやすく描かれていて、色のお勉強になります。ベールが透けているところの色使いとか、絵が本当に美しい!すでに絶版になっているのが残念です。


『あたらしいおふとん』は、思い出の布をパッチワークのように紡いで作られた、ある女の子とおふとんの物語。女の子が布を眺めるうち、夢の世界に誘われます。影の描写がこれまた美しいです。


『光の旅 かげの旅』では人は登場しませんが、他の2作品を読むと、人物の表情が柔らかいのがとても素敵で、白黒の絵本とはまた違った印象を受けます。
ぜひぜひ、読んでみてくださいね。
『光の旅 かげの旅』
アン・ジョナス 作
内海まお 訳
評論社
読んであげるなら:3歳さんくらいから
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