
こんにちは。
たけのこの季節が、もうすぐ終わりますね。
たけのこが大好き!という訳じゃなかったんですけれど、今年はかうち彩園さんから立派な生たけのこを連れて帰って、アク抜きから調理してみました!

茹で汁につけたまま一晩放置しました。写真は皮をするするっと取ったところ。

アク抜き後はえぐみも残らず、若竹煮やお吸いもの、炊き込みご飯、天ぷらにして。
ひと手間かけてみると、旬の美味しさと達成感に、身も心も一気に嬉しくなりました☆
たけのこのぐいっと伸びていくパワーをお裾分けしてもらった気分です。
そんなこんなでたけのこに浸っていたら、この絵本を思い出したので今日は紹介します。
『ふしぎなたけのこ』
山の奥の村の、昔むかしのお話。
この日はたろのお誕生日。お母さんからご馳走のたけのこを掘ってきておくれと頼まれたたろは、竹林に出かけます。
たけのこを見つけて掘っていると、暑くなって上着をそばのたけのこにかけました。
とその途端…、たけのこがぐぐぐっと伸び始めたのです。慌てて上着を取ろうとして、たけのこと一緒に上へ上へ昇っていくたろ…

いつまで経っても戻らないたろを心配したお母さんが探しに出ると、遥か上空からたろのかすかな声が聞こえるではありませんか。村の人たちも駆けつけます。
一方のたけのこは、伸びるのに飽きて一休み。たろを助けるため、今のうちに!とたけのこを切りにかかる村人たち。
たけのこは長い長い時間をかけ、ついにものすごい地響きを立てて倒れます。そのたけのこを辿っていくと、村の人たちは大きな池に。いや、そこは海だったのです。
海へ行かなくなってもう100年経っていましたが、再び昆布や魚や貝が採れると知った村の人たちは大喜び。無事だったたろのお誕生日祝いが改めて開かれます。
山深き村ですが、もう海までの道に迷うことはありません。たけのこが道しるべになってくれますから。

読んでいると、かつては山に住んでいれば海の食べものが手に入るのは当たり前じゃなかったんだよな、と改めて思います。今はどこに住んでいても何でも手に入る時代だから、村人たちの驚きと喜びが新鮮なんです。
便利で嬉しいことだけど、その食材がどうやってやってきたのか…ということに思いを馳せにくいし、特別感が無いに等しいのは残念。
村の人たちの、驚いたり泣いたり喜んだりとすごく生き生きした表情、最後はにぎやかに海の幸山の幸をいただく様子にほっこりします。
ところで、目覚めたように突如伸び始めたたけのこは、一体なんだったのだろう。
もたらされる恵みと同時に、この訳の分からない理不尽なたけのこには自然の脅威すら感じる私。笑
コインの裏表みたく、恵みも恐ろしさも与える自然を敬ったり畏れたりしながら、私たちは暮らしてきたんだなぁ、なんて。
テンポ良いダイナミックなお話にぐいぐい引き込まれます。
お誕生日をお祝いするくだりは、現代っ子も親しみが湧きそう。
ブラチスラバ世界絵本原画展という2年に1度開催されるコンクールで第1回目のグランプリを獲得した作品です。
作者松野正子さんの「お話が本当だと思える時期を大切にしてほしい」という想いが込められているそうで、素敵ですね。
たけのこが食卓に並ぶ日なんかに、ぜひ読んでみてください。
『ふしぎなたけのこ』
松野正子 さく
瀬川康夫 え
福音館書店
読んであげるなら:3歳さんくらいから

コメント