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あるところに、ソフィーという名前の女の子がいました。
ソフィーとお母さんが台所でお茶の時間にしようとしていたところ、突然玄関のベルが鳴りました。
だれだろう?ソフィーがドアを開けると、そこには大きくて毛むくじゃらのしま模様のとらがいました。
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「ごめんください。ぼく、とてもお腹がすいてるんです。お茶のじかんにご一緒させていただけませんか」
台所でご一緒したとらは、お盆の上のサンドイッチを丸のみ、テーブルの上のビスケットやケーキを平らげ、作りかけの夕飯や、冷蔵庫の中身、戸棚の缶詰を食べ尽くし、牛乳、オレンジジュース、水道の水まで飲み尽くし、「ありがとう、そろそろおいとまします」と言って去っていきます。
後に残されたお母さんとソフィーは散らかった家のお掃除。食べるものは何もありません。水がないのでお風呂に入ることもできません。そこへ、お父さんが帰ってきました。事情を話すとお父さんは「それならいい考えがある」と言って、2人をレストランへ連れ出します。
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次の日、お母さんとソフィーは食べものの買い出しに出かけました。次とらが来た時のためにタイガーフードも買いました。しかし。とらが再びやってくることはありませんでした。
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突然現れる巨大なとら。にやっとした笑顔に読み手はどきっ。
しかしソフィーとお母さんはこのとらに驚く様子もなく、食べものを平らげられてしまっても、しまいには片付けせず出ていかれても「お父さんの食べるものがないわ〜」と言ってちょっと困り顔をするくらい。
ソフィーは、とらのそばで始終うっとり。しっぽをなでなで。恋する乙女みたいです。
あり得ないストーリーと、それが淡々と受け入れられるそのギャップが、このお話の一番の魅力⭐︎
紳士的なセリフに似合わないとらのはちゃめちゃな食べっぷりも、チグハグで面白いです。
ドイツ出身のイギリス人作家ジュディス・カー(Judith Kerr)さんの代表作。『ねこのモグ』シリーズなどイギリスで愛されている作家さんの一人です。
彼女は40代からお話をかきイラストを描き始めたのだそう。『おちゃのじかんにきたとら』は、長女のテイシーさんにこのお話をよく聞かせていたことがきっかけとなって生まれたそうです。
日々の暮らしの中でお子さんに聞かせていたお話が絵本になったって素敵ですね。
ありえないお話なのにリアルに感じるのは、実際にお子さんに語って楽しんでいた土台があるからでしょうか。淡々とした語りは、昔話を連想させられます。現代版昔話っていう感じでしょうか。
お話に出てくるお母さんやソフィーの服や、食器、インテリアなどブリティッシュでどれも可愛い。
いつ読んでも不思議な魅力の虜になるおしゃれな一冊です。
『おちゃのじかんにきたとら』
ジュディス・カー さく
晴海公平 やく
童話館
読んであげるなら:3歳さんくらいから
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