
おやゆびをかざすと植物が生えてくる、不思議な力を持った少年チトの物語です。
言わずと知れた名作なので、ご存じの方も多いと思います。
裕福な家庭で育つチトは、あるとき、庭師のおじさんの見習いをして、自分に植物を生やす能力があることに気づきます。
チトはこの能力を使って、刑務所や病院、貧しい家々をしあわせにしていきます。
この物語のみそは、チトのお父さんが裕福な武器商人であることです。
戦争は嫌だと言いながら、戦争がうまくいかないと怒るおとなたちの矛盾が、滑稽に描かれています。
”わかった、戦争ってこういうんだ!説明をきいてみて、意見をいうだろ、すると、パン!だ。ほっぺたをたたかれる。もしぼくがこいつのズボンにヒイラギを生えさせてやったら、どんな顔をするだろう!”
兵器工場の監督をしている「かみなりおじさん」に、おじさんの商売は恐ろしい商売だ、と言ったとき、平手打ちをくらって、チトはこう考えます。
でも。賢いチトは、おじさんのズボンにヒイラギを生やすより、もっといい方法を思いつくのです。

各地で起こる戦争は痛ましく、「戦争反対」を掲げたくなります。一方で、戦争はもっと身近なところにある、ということに気づかされます。自分の心に手を当てて、自分は戦争を起こしていないか、振り返らなくっちゃ、と思います。自分のなかの戦争を、まずは終わらせたいです。
詩的で、美しい童話です。作者のモーリス・ドリュオンはフランスの文化人で、『みどりのゆび』は、子どもたちのために書いた唯一の作品だそうです。
物語の中にはたくさんの植物が登場し、ところどころに登場するカラー挿絵も素敵です。
岩波書店から2009年に出版された愛蔵版はカバーも中身もとても美しい装丁になっており、ギフトにもおすすめします。
チト少年の本質をつくことばにハッとさせられたり、植物のパワーに思いを馳せたり、綺麗な挿絵を堪能したり。いろいろな面から、大人もこどもも味わえる一冊です。
『愛蔵版 みどりのゆび』TITOU LES POUCES VERTS
モーリス・ドリュオン 作
ジャクリーヌ・デュエーム 絵
安東次男 訳
岩波書店



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