こんにちは。
暑い毎日が続きますね。
今日は、20世紀を通して活躍したNY生まれの絵本作家、バーバラ・クーニーの一冊をご紹介します。
グリム童話の代表作のひとつ『ロバのおうじ』。改めてどんなお話だったかなと思う方もいらっしゃるでしょうか。
この絵本は元々のグリム童話をアレンジした「再話」のようですが、おとぎ話の世界観とハッピーエンドに、読むたび心がほっと幸せになります。
それでは、あらすじからご紹介したいと思います。
・・・おはなし・・・
あるところに、広くて平和な国をおさめている王さまとお妃さまがいました。
この2人はなんの不自由もない豊かな暮らしをしていましたが、子どもにだけは恵まれませんでした。
なんとしても子どもが欲しかった2人はあるとき魔法使いに相談し、金貨と引き換えに子どもを授かることに。ところが金貨をごまかしてしまったために魔法使いの怒りを買い、生まれてきた子は、ロバの姿をしていた子どもだったのです。
仕方なく、王子としてロバの子を育てる2人でしたが、愛情を注ぐことはありません。王子としての振る舞いや教養をすっかり身につけたロバの子でしたが、愛情をもらえないことに悲しくなり、得意のリュートを携え旅にでることに・・・。
果たして、ロバの姿のままで愛してくれるひとは見つかるのでしょうか。
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このお話でなんといっても惹きつけられるのは、ロバの王子の素直さと真っ直ぐなところ。
この王子は、容姿のせいで小さいときから周りにいじめられ、両親から目をかけてもらうこともなく辛い思いをしますが、それでも真っ直ぐさや前向きさを失わず、自分の居場所を求めていきます。その姿がなんとも健気で応援したくなるのです!
バーバラ・クーニーの挿絵がすばらしいのはもちろんのこと、もきかずこさんの訳からロバの王子の気持ちがぐっと伝わってきて、心動かされます。
さいごは、旅先の国のお姫さまからの愛を得て、”ロバの皮”がするすると脱げて人間の王子さまに変身、めでたく幸せに・・・という結末。
お話を読んでいると『美女と野獣』が思い浮かびました。私たちはこんな風に、一見分かりにくい内側の部分に目を向けて、愛でてくれる人たちをいつでも求めているのかもしれませんね。
ちなみに元々のグリム童話では、ロバの子がいじめられていたとか、両親から愛されなかった、などの記述は見当たりません。旅先の国でもロバの姿のままですんなりお姫さまと結婚する、という展開です。(夜だけ、その王子はロバの皮を脱ぐことになるのです。)
元のお話も、興味ある方は読んでみてくださいね。
→岩波少年文庫 グリム童話集(下)
昔話の研究家、小澤俊夫さんのロバの王子の解釈が面白いなと思ったので、ご興味ある方はぜひ。
おはなしの朗読もこちらで聴けますよ。
→小澤俊夫の昔話へのご招待:グリム童話の男の子の昔話「ロバの子」
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お話とは、自らの体験を重ねて癒しや発見につながるところがあると思います。
王子が自分の居場所を求めてチャレンジする姿や、コンプレックスを乗り越える姿、自分をそのまま受け入れてくれる居場所を見つける姿は、読み手のわたしたちの人生にどこかシンクロして、きっと勇気や希望をもらえるのではと感じたわたしです。
そしておとぎ話のハッピーエンドは、お決まりでありながらやはり癒されます♪
バーバラ・クーニーの柔らかで優しいタッチのおとぎ話の世界にぜひ浸ってみて貰いたい一冊です。
ちょっとお疲れの日に、そっとページを開いて堪能してくださいね。
大人子ども、皆さまにおすすめです。
『ロバの王子』
グリム童話より M.ジーン・クレイグ さいわ
バーバラ・クーニー え
もきかずこ やく
ほるぷ出版 1977年
読んであげるなら:4、5歳さんくらいから(文章は読み応えあるボリュームです)
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