【絵本26】『みどりのゆび』戦争をとめた天使

おやゆびをかざすと植物が生えてくる、ふしぎな力を持った少年チトのお話。

裕福な家庭で育つチトは、あるとき、庭師のおじさんの見習いをして、自分に植物を生やす力があることに気づきます。

チトはこの力を使って、刑務所や病院、貧しい家々をしあわせにしていきます…

この物語のみそは、チトのお父さんが裕福な武器商人であること。
戦争は嫌だと言いながら、戦争がうまくいかないと怒るおとなたちの矛盾が、滑稽に描かれています。

”わかった、戦争ってこういうんだ!説明をきいてみて、意見をいうだろ、すると、パン!だ。ほっぺたをたたかれる。もしぼくがこいつのズボンにヒイラギを生えさせてやったら、どんな顔をするだろう!”

兵器工場の監督をしている「かみなりおじさん」に、おじさんの商売は恐ろしい商売だ、と言ったとき、平手打ちをくらって、チトはこう考えます。
でも、賢いチトは、おじさんに仕返しするより、もっといい方法を思いつくのです。

各地で起こる戦争は痛ましく、「戦争反対」を掲げたくなります。一方で、“戦争”はもっと身近なところにある、ということに気づかされます。自分の心に手を当てて、自分は“戦争”を起こしていないか、振り返らなくっちゃ、と思います。

詩的で、美しい名作童話です。作者のモーリス・ドリュオンはフランスの文化人で、この童話は、子どもたちのために書いた唯一の作品だそうです。

物語の中にはたくさんの植物が登場し、ところどころに登場するカラー挿絵も素敵です。

岩波書店から出版されている愛蔵版は、カバーも中身もとても美しい装丁になっており、ギフトにも素敵です。

チト少年の本質をつくことばにハッとさせられたり、植物のパワーに思いを馳せたり、綺麗な挿絵を堪能したり。

いろいろな角度から、大人もこどももじっくり味わえる一冊です。

『愛蔵版 みどりのゆび』TITOU LES POUCES VERTS
モーリス・ドリュオン 作
ジャクリーヌ・デュエーム 絵
安東次男 訳
岩波書店

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