”アフリカにはいろんな鳥が住んでいます。
なかでも変わっているのはハシビロコウ。
大きなお腹に、大きなくちばし、大きな頭に、大きな足。
おかげで他の鳥たちにあれこれ言われてしまいますが・・・”
”ハシビロくん”と言われるハシビロコウが、水辺で魚を探しています。
するといろいろな鳥たちが現れて、本人のいないところでハシビロくんの悪口大会に!
「あれはもう、口というより靴だよね」
「あれはもはや鳥の頭じゃない。クジラの頭だ!」
「あれは足というよりボートじゃないの!」
などなど、ひどい言われ様。笑
そして、他の鳥たちは自分がいかに優れているか意気揚々と語るのですが
肝心のハシビロコウはどこに行ったかというと・・・
なんと、悪口大会をしていた鳥たちを狙う巨大なワニに一撃を食らわしていたのです!
「やあ、みんな。ごめんよ、ちょっと忙しかったんだ。だれが何て言ったって?」
と颯爽と登場するハシビロコウに、みんなもごもご・・・。
慌てて「き、きみってすごい!!」なんて言われてる時にはもう、ハシビロコウは水辺へ。
新たなお魚を探しています。大きいお腹はまだまだいっぱいにならないんですもの。
・・・・・・・・・・
鳥たちの、得意げだったり気まずかったりコロコロ変わる表情がユーモラス。
絵は南アフリカ出身のピート・フロブラー(Piet Grobler)さん。
アフリカンな陽気な感じが絵にあって、日本ではなかなか見ない色彩です。
魅力的なのはマイペースで悪口にも気づかないほど我が道をいくハシビロくん。
ハシビロくんは自分に忙しくて、悪意に気づく暇もないのです。
ハシビロコウは、昔上野動物園で見た石像のように動かないその姿が面白かったなぁと思い出すのですが、実際に日中の活動時間の60%はただ立っているという研究結果があるそうです。なるほど・・・
その目的は、水辺にいる魚を捕らえるため。そのためなら何時間だって待っている事もあるそう。
そして、魚を確実に捕らえるために群れで行動することはなく、一匹で待ち続けるのだそうです。
そんなハシビロコウの生態がよくお話に反映されています。
ハシビロくんは誰かと群れることもなく、堂々とした風格が漂っています。
私もあなたみたいに突き抜けて飄々と在りたいものだよ、ハシビロくん。でもやっぱりまだ周りが気になっておどおどしちゃうんだよね。
「ハシビロコウがいく!」と、題名に思わず!マークをつけて読みたくなるインパクトの一冊です。
ハシビロコウのことをよく知らなくてもバッチリ楽しめますよ。
もちろん、アフリカの美しい鳥がたくさん登場するので、鳥好きさんにもぜひ。
『ハシビロコウがいく』
”Schoenbek”
ヤウキェ・アクフェルト 文
ピート・フロブラー 絵
広松由希子 訳
BL出版
読んであげるなら:5歳くらいから
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